ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 (2011-07-06)
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○PIXARの作った3Dアニメーション映画。アニメーション表現の極限とも言える、無機物に個性と感情表現を付与するという部分に置いてはもはや職人芸にさえ達しているのがスゴイ。
○環境汚染が進み人類の居なくなった地球で、一人ゴミ収集ロボットであるWALL・Eが外宇宙に居る人間たちが送り込んだ植物探査ロボットEVEと出会い、彼女を追って技術の進歩と共に堕落した人類の生活圏に入って……というお話。
主に描かれるのは「誰かと手を繋ぎたい」というシンプルでありながら孤独の存在には不可能なテーマ。WALL・Eが一体どれぐらいの時間を孤独に過ごすことでその欲求を生みだすのに至ったのかと考えるだけでお話ひとつ作れそうではある。
○キャラクターたちは本来無機物なロボットたちであるにも関わらず、動き(アニメーション)によって感情を表現しているのがスゴイ。
WALL・Eはラスト付近で初期化されてしまうのですが、その時は逆にロボットに見えた。これ逆説的に人は何たるか。感情とはどう表現されるのかという事をしっかり分った上で絵を作ったと高らかに宣言するような物で、制作スタッフのプライドのようなものさえ見て取れました。
○物語の読後感も良く、ラストまで楽しく希望を持って観ることが出来ました。今更地球に人類が戻ったって、いろいろ大変なこともあるんじゃないのという大人の水を差すような意見を、スタッフロールで怒涛に流れる「未来」によって打ち砕いているのも爽快感があった。困難であれど、打ち破れぬ事はないと堂々と言い切られると、捻くれた大人は何も言えなくなるのです。これを『暴力的ハッピーエンド』と名付けたい。
○特に好きなのがラストの演出で、古代人の壁画のような物で人類たちのこれからが描写される所が気に入りました。
おそらく文明の再構成を描いているのでしょうが、徐々に壁画のレベルが上がっていき、最後にはコンピュータグラフィクス(ドット絵)に行き着くというのはとても粋。コンピュータによるアニメーションを作成しているPIXARだからこその、私たちが作っている物は過去から続いてきた文化そのものだと言いたげにも思えました。
○脚本もアニメーションも高品質に作られている作品で、テーマ性も抜群なので子供向けと侮らず、観て欲しい一本です。
とても大好きな映画が一本増えた事に私は嬉しいです。
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