角川書店 (2012-10-26)
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○世の中には実話を基にした映画というのが数多くあるのですが、それらは映し出されるリアリティの代償としてテンポに難がある作品が多く、途中で中だるみしたりラストを駆け抜ける爽快感に欠けていたりする事が少なくありません。
しかしこの『シティ・オブ・ゴッド』は物語の構成が上手く、ずっと作品に引き込まれたまま観ていられる映画になっております。
○ブラジルのスラムで行われる少年たちによる暴力を描いた映画です。真面目にしようとすればいくらでも真面目に出来そうなテーマですが、何故かこの映画には陰鬱とした悲壮感などは感じず、さんさんと降り注ぐ太陽に相応しいようなカラっとした印象を受けます。
軽快なミュージックとテンポの良いカメラワークがその陽気さを強くしているのだと思います。
○主人公のカメラマン志望の少年、ブスカペの視点から見る暴力の応酬はホントろくでもない世界があるなと思わせてくれます。
悪に染まらなかった主人公のただひとつの理由は強盗なんて出来ない程気弱だったのだという情けない正しさは、とても魅力溢れている設定のように思います。私は正義というのは弱さにこそ宿るのだと思っているので。
○ラストはある意味因果応報に収まり、そして暴力の輪廻はどこまでも続いていくのだと示唆して終わります。
テーマ的にはとても正しく、また見ている人間もそれはそれで仕方ないと思わせる展開なので不快感は無いと思います。
○出血シーンや人が容易く死ぬ場面が多いのですが、前述した通り不快感を出来るだけ感じさせないよういに製作者側が気をつけていると思います。
綺麗さっぱり見終える事が出来る良い映画だと思いますので、オススメですよ。
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